善勝寺だより 第115号令和3年6月22日発行発行責任者 明見弘道 (2ページ) |
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東光山ミニ法話
『舎利礼文』 その1
『舎利礼文(しゃりらいもん)』というお経は多くの宗派で、お葬式やお墓での供養の際によく読まれています。
「舎利」はインドの語で「シャーリラ」を音写した言葉で、広い意味では遺骨のこと。狭義には仏様や聖者の遺骨を表します。
特にお釈迦樣のご遺骨を「仏舎利」と言いまして、大変尊いものとして崇拝されてきました。
玄奘三蔵法師(げんじようさんぞうほつし)は足かけ17年もの間、中国からインドへと仏教を学びに赴きました。その際に見聞したことを記した『大唐西域記』によりますと、お釈迦樣の仏舎利は、遠方から来た八国の王に分配され、それぞれの仏舎利を安置した場所にはストゥーパが建てられたとされます。
ストゥーパとは仏塔のことで、中国では卒塔婆(そとうば)と音写されています。
特にインドサンチのストゥーパが有名で紀元前三世紀アショカ王の時代に建てられました。
直径36メートル高さ16メートルとたいへん大きな仏塔でお椀をかぶせたような形をしています。また、周囲には多くの仏教寺院や僧院跡があります。
東南アジアや中国・韓国にも多くの仏塔が建てられました。日本の五重の塔・七重塔なども仏塔です。
卒塔婆と言えばお墓にたてる木でできた板塔婆を思い浮かびますが、そもそもお墓自体も卒塔婆なのです。
お釈迦樣の仏舎利を尊崇してきたように、私達のご先祖様の舎利が納められたお墓を礼拝することも信仰の一つの形であります。
『法華経』というお経がありますが、
その序品(じょぼん)に「仏が亡くなってから、舎利を納めて七宝よりなる塔を建てるのを見ました」とあります。
また、方便品(ほうべんぼん)には「塔を造立し舎利を供養する者、仏像を礼拝する者もすべて仏道を成(じよう)じ、さとりを開くことができる。」
「そんな難しいことでなくていい、子供が戯れに砂を集めて、仏さまを拝むためのストゥーパをつくる、こういうような人、みな仏道を完成することになります。」と書かれています。
仏教学者中村元先生の解説では「仏教信仰も時代を経るにつれ、いろいろな信仰の姿が現れましたが、それらがみな最後には、究極において悟りの境地に到るということを説いています。
つまり信仰心を持って、仏さまの像や仏塔を拝む、あるいは壁に仏さまの像を描くなどです。
子供が戯れにやっただけでもいいというのは、ずいぶん思い切った発言ですが、純粋な信仰を持てば、それに対して仏さまの慈悲の救いがあるということが表されています。」
次回から、本文について学んでいきたいと思います。
(続く) |
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