善勝寺だより 第112号令和2年9月7日発行発行責任者 明見弘道 (2ページ) |
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東光山ミニ法話
『菩提和讃』
妙心寺派布教師会現代語訳
かかる時節(じせつ)を失わず
信心(しんじん)注1 決定(けつじよう)注2 いたすべし
人人(ひとびと)賢(かしこ)き智慧(ちえ)注3 あれば
春(はる)は万(よろず)の種(たね)を蒔(ま)き
秋(あき)の稔(みの)りを待(ま)つのみか
衣服(いふく)家宅(かたく)に至(いた)るまで
遠(とお)き計画(はからい)立(た)てながら
今をも知(し)れぬ後(のち)注4 の世(よ)の
永(なが)き冥路(よみじ)注5 を打(う)ち忘(わす)れ
空(むな)注6 しく過(す)ごすぞ愚(おろ)かなり
無常(むじょう)注7 の風(かぜ)に誘(さそ)われて
忽(たちまち)ちこの世(よ)を終(おわ)るとき
何(なに)を頼(たの)みとなすべきや
あまた治(ち)産(さん)のあるとても
冥途(めいど)の用(よう)にはならぬもの
家財(かざい)重宝(じゆうほう)持(も)つ人(ひと)も
携(たずさ)え行(ゆ)くべき途(みち)ならず
偕老比翼(かいろうひよく)注8 の契(かたら)いも
しばし浮世(うきよ)の夢(ゆめ)ならん
兄弟(きょうだい)朋友(ほうゆう)ありしとて
伴(ともな)い行(ゆ)くことさらになし
注1 仏の教えを信じて疑わない心 |
注2 もはや動じることなく信心が確立し、その信心に安住すること |
注3 物事の真のあり方を正しく見極める認識力 |
注4 来世、死後赴く世界 |
注5 冥は光がなく暗いことを意味します。冥途も同じ |
注6 この世の一生を無駄に過ごしてしまうこと |
注7 物ごとが移り変わって少しもとどまらないこと。すべてのものは縁起によって生じたもの |
注8 比翼連理などと同じで、ともに老いていくことを表す。愛情深く仲睦まじい夫婦の喩え |
現代語訳
思いたったが吉日です。心を決めて我が心の「ほとを」を信じましょう。人はそれぞれいかに生きるかを知っているので、春に種を蒔き秋の収穫を待つだけでなく、衣食住の心配も遠い先の事までいろいろ手だてを模索しています。しかし、今にも息を引き取らなければならないことなど思いもせず、のんびりしていてよのでしょうか。
常に移ろいとどまらぬ現実にあって、突然死を迎えたそのときに一体何を頼りにしたらいいのでしょう。
多くの資産があったとしても死ぬときの何の役にも立ちません。どんな宝も持っては行けません。
夫婦仲良く愛し合うのも、わずかなあいだのゆめのようです。
家族や友達だって一緒にあの世まではつきあってくれません。
(続く) |
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